vol.01「はしご酒班、大手門で恋に落ちる」

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vol.01「はしご酒班、大手門で恋に落ちる」

 

「好きなひとが、できました。」

コピーライターの糸井重里さんが書いたジブリ映画「耳をすませば」の名キャッチコピーです。
たった一言で、あの頃のピュアに恋する気持ちとか甘酸っぱい感じとか照れくさい思い出が蘇ってくる素敵なコピーだなあと惚れ惚れします。

さて、vol.01の今回は、そんな甘酸っぱい青春を通り過ぎて、酸味が日に日に強くなっている我らトーコンはしご酒班が落ちてしまった恋のお話です。

 

福岡でお酒を飲むと決めたら、天神か中洲か博多がテッパンだ。きっと福岡に住むほとんどの人はそう言うんじゃないでしょうか。

今回お店に向かうべく降りた駅は、地下鉄空港線 大濠公園駅。
いわゆる"テッパン"ではないエリアですが、実は今この近辺が静かにアツい街として、酒飲みからひそかに人気を集めているようなのです。

目指すお店は駅から歩いて5分程度にある「炭焼きとりこ」。最近噂になっている平日も満席のあのお店です。

いざ尋常に!よろしくお願いしまーす!

 

まずは外から眺めてみる。大きなガラス張りの扉と白いのれんが特徴的です。
おお、外から見ても店内が盛り上がってるのが分かる...

楽しそうな笑い声が外にも聞こえてきます。

 

扉を開けてお店の中に入ってみると、コの字型になったカウンター席!
おお、今巷で人気のコの字酒場だ...

隣の席との距離感も近いので、つい話しかけたくなっちゃう。

 

席に座ると同時に頼んだのは、生ビール。
社会人4年目にもなると、メニューを見ずに生ビールを頼んでしまうのですが、会社の先輩の今にも弾けそうなビール腹を思い返すと、自分も不安な気持ちになります。

それでも毎回頼んじゃうから本当に罪な存在だよななんてどうでもいいことを考えていたら、ビールがやってきました。

店内は炭焼きのいい香り...

ジョッキを受け取ると、スタッフさんが一言。「まっすぐ帰れない気持ち、わかります」とニヤリ。
どうした今!口説かれたんか!なんだなんだ!!

取り急ぎ、平静を装って「そうですね(ダンディな声)」とお返事。スタッフさんは「楽しんでいってくださいね」とまた他の席に向かっていきました。

テンパってたのはバレてない。成功だ。ひとまず飲もうと思い、ジョッキを持ち上げるとスタッフさんの一言の理由が分かり、なるほどなと僕もニヤリ。

グラスに「まっすぐ帰れるわけがない」の文字が。のんべえの気持ちがよく分かってます。

 

オススメされた串を何品か頼んで待っている間に焼き場もチラッと覗き見。
店長かっこいい...

そしてやってきました、串の数々。
ここからはおいしすぎて記憶が飛んだ&写真を撮るのを忘れてしまったので、ダイジェストでお送りします。

食感が最高で食べ応え抜群の手作りつくね串。

幸せのうずら串。半熟な黄身に思わずバンザイ。

他にも、砂ズリ・豚バラネギ巻・和牛さがり・ジャンボレタス巻串、ほくほくの大根の唐揚げ、ポテトサラダ…。
一口食べるごとに、拍手がとまりません。

 

思わず「うまあ...」と声が漏れてしまっていると、隣から「初めて来たんですか?」と声が。

横を向くと、ズッコケ三人組がそのまま大人になったような仲良し青年三人組です。

写真いいですか...と聞いてみると、ノリノリで対応してくれました。

 

なんでも社会人野球の繋がりで仲良くなって三人でよくこのお店に来るそう。

「僕らは、4月からこいつが転勤になったから今日はお祝いで!」
「おいおい!もっと寂しがれよ」

なんて仲が良いんだ、素敵。気付くと、やり取りに店長とスタッフさんも参加。

店長「そうかそうか、転勤か。そりゃあ喜ばしいな!良かった!」
スタッフさん「転勤は寂しいけどしょうがない!さあ!いってらっしゃい!!」

「いやいや二人とも切り替え早いし、もっと寂しがって!」

青年三人組のうちの一人は、実家のお母さんにもこのお店のことや店長のことを話してるらしく、それにも店長が「俺は彼女かよ!」と突っ込んでました。
そういうの大好きです。

転勤前の思い出にと、普段写真は撮らない店長とスタッフの銀さんも入って記念写真。

少しお腹もいっぱいになってきたタイミングで、店長の金子敏之さんに思い切って話しかけてみました。
お話を聞いてみると金子さん、なんとあの焼きとりの八兵衛で10年修行をされていたそう。

昔からの自分のお店を持つ夢を追い続け、2012年に焼きとりのとりこ、2017年に「炭焼きとりこ」と短い間に人気店を続々と立ち上げてこられました。

笑うと目がなくなる店長。これには思わず心臓も飛びはねます。

 

「他のお店ととりこで悩んでる人がいたら、どうやって選んでもらいますか?」と少しいじわるな質問もしてみました。

金子さん「うーん...。俺は、ウチをどうしても選んでもらいたいっていう気持ちがあんまりないんだよなあ。それよりも、その人の目的に合わせて一番いいお店が選べる手伝いをしたいもん。もちろんウチを選んでくれた時には、絶対にどこよりも楽しい気分になって帰ってもらうけど。」

 

ズキュン。

この感覚、数年ぶりです。胸がざわざわする。恋です。心の中の柳沢慎吾が「ウーウー!ピーポーピーポー!」と恋のサイレンの音を響かせます。

その考え、素敵すぎる。
5分前のいじわるな質問をした自分をなかったことにしたい。店長の記憶からすぐにでも消したい。

実際に、お客さんから「大将!最近のオススメのお店教えて!」「個室で美味しいところどこかない?」など相談されることも多いそう。
後日「あのお店良かったよ!」と言いながらとりこにまた来てくれるのが嬉しいんだよねと笑う金子さんがまた素敵です。

その後もお話を聞いていくと、お店のこだわりが続々と出てきます。

自慢の串は「九州の鶏」にこだわっていること。

料理に使う野菜も行きつけの八百屋さんが朝倉の市場から卸した新鮮なものを仕入れていること。

日本酒は、福岡の有名な酒屋さん以外に山形の酒蔵さんにも直接足を運び、卸してもらっていること。

ずらっと並ぶ日本酒や焼酎の名酒たち。ゴクリ...

こだわりは料理だけに留まらず、料理を盛る器にも。びっくりするほどお皿の種類が豊富なんです。
ざっと確認できたものだけでも、九谷焼・小石原焼・備前焼・美濃焼・唐津焼・・この他にもたくさんの個性的な焼き物がありました。

炉端 百式のオーナーに影響されて、器の世界にハマったという金子さん。窯元にも足を運んで新しい器を買い付けているそう。

こんなにいろんなお皿があったら見てるだけでも楽しいんです。

 

金子さん「全部お客さんに楽しんでもらうため。料理楽しみたい人も、お酒飲みたい人も、会話楽しみたい人も、大事な人をもてなしたい人も、お祝いしたい人も、家族との時間を過ごしたい人も。ここに来れば、みんなが今日一日を楽しかったー!で終われるようにしたいと。」

金子さん「あとさ、俺屋台が大好きなんよ。だからこのお店も、お客さん同士が気軽に話せたり、つながったりできる場所になればいいなあとも思ってる。常連さんがここで知り合って結婚しました!とかなったりしたら、もう最高よね。」

思わずめまいです。
お酒のせいか、はたまた止まらない金子さんの熱い思いのせいか、クラクラしてきました。
「好きです!」という告白の言葉が喉まで出かかりましたが、ここはぐっと堪えてスマートにお会計を頼みます。

取材のご協力ありがとうございました!!!!!


滞在時間3時間半、店長やスタッフの方々、他のお客さんとたっぷりお話しして、おいしいご飯を食べて思いました。
結論は一言。

こりゃあ、まっすぐ帰れるわけないな。

また近いうちにお邪魔します。

 

vol.01でさっそく「好きなおみせが、できました。」

さてさて、次回のvol.2はどこになるのやら。

こうご期待!

 

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