【インタビュー】「見る」ことができない全盲の私と「見た目」を重視して仕事をするデザイナーで対談してみた

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みなさん、こんにちは。
トーコンで働く広報 兼 制作グループ 兼 パラアスリートの日向です。

今回は「多様性を認め・活かし合う」を大きなテーマに、新たな企画を立ち上げることになりました・・!

全盲である私が様々な立場の人たちと対談をして、お互いに新たな発見を得ようという企画です。対談した内容は、インタビュー記事として公開をしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

記念すべき、第1回目は私が所属している株式会社トーコンで「デザイナー」として働いている村田さんとの対談です。

普段「見る」ことができない全盲の私と、デザインという「見た目」を重視して様々なことを考え、制作している村田さん。この二人で話して、どのような気づきが得られたのか。ぜひ、ご覧ください。

インタビューメンバー紹介

【インタビューをする人】
日向 賢(ヒナタ サトル)

ブラインドサッカーの選手として活動をしながら、トーコンの社員として広報・WEB制作関連の仕事もしています。

 

【インタビューを受ける人】
村田 さん

株式会社トーコンでデザイナーとして勤務。グラフィックデザインを中心に、企業のパンフレットやチラシなどを制作。最近ではWEBデザインも手掛けている。企業ロゴやキャラクターデザインなど、幅広く「デザイン」に携わっている。

■デザインの原点

日向(以下、H):
本日はよろしくお願いします。

村田(以下、M):
こちらこそよろしくお願いします。日向さんとこうやってじっくりお話しするの、実は初めてなのでとても楽しみにしてました!

H:
ありがとうございます!そう言われるとちょっと照れちゃいますね(笑)
今日は全盲の私が、デザインを生業としている村田さんと対談ということで、どうなるか全く予想がついてないです(笑)
どんな話しになるのか、楽しみです。
まず、いきなりですがいくつか質問を考えてきたので、そちらを質問しても良いですか?

M:
もちろんです。

H:
えーと、まずはデザイナーという仕事について聞いても良いですか?
職種として「デザイナー」という仕事があることは私も知っているのですが、どんな仕事なのか全く見当もついてなくて。

M:
いろいろやっているのですが、採用に関わるパンフレットやチラシの作成、採用サイトやコーポレートサイトのレイアウトなどのデザインを担当しています。

H:
なるほど。私の想像では素材となる写真などを組み合わせたり、あとはWEBのレイアウトを考えたり、お客様に提案したりというイメージだったのですが、大体あってますか?

M:
大体あってます(笑)。最近ではロゴを考えてと言われれば考えますし、色々な素材を組み合わせてうまくデザインしてと言われればやりますし、写真の中の人の二重顎を消してといった画像補正などもやってます。
結構、何でもやってますね(笑)

H:
なるほど。ありがとうございます。
少しデザイナーの仕事について知ることができました(笑)
デザイナーになろうと思ったのはいつくらいでしょうか?

M:
デザイナーになろうと決めたのは大学生の時です。
そもそもは小学生の時から絵をかくのが好きで、美術関係のことをしたいなぁと漠然と思い続けてました。
ただ美術関関係の仕事と言っても、具体的にどんな仕事をしたいのか決めきれてなかったんです。
そこで大学では、美術系のことを幅広く学べる学部に入りました。
色々なことを学んでいくうちに、私はアーティストとして作品を作るよりも何かを書いたり、デザインして「誰かに喜んでもらえる仕事がしたい」と思うようになったんです。

思い返してみると、小学生の時にクラスメイト全員の似顔絵を書いて、みんなにとても喜んでもらったことがあったんです。
その時から、自分が満足する作品を作り上げるよりも「相手のためにつくる」ことが楽しかった。
それが私の「デザイン」の原点なのかもしれません。
だからクライアントとか、ユーザーとか、誰かのためにつくるデザイナーという仕事に強く興味を持ったんです。

H:
めちゃめちゃ良い話じゃないですか!ちなみにトーコンへは新卒で入社されたんですか?

M:
いえ、中途入社です。
前職ではWEBデザインなどの仕事をメインでやっていました。
ただもっと紙のパンフレットやチラシのデザインをやりたい!と思いトーコンに転職したんです。
だから最初はパンフレットやチラシ関係の業務を中心にやっていたのですが、時代の変化などもあり、今は前職のWEBの知識も活かしながら何でもやっていますね。

■全盲者にとってのデザイン

M:
私からも質問してもいいですか?

H:
もちろんです!

M:
日向さんって「全盲」なんですよね?

H:
はい。そうです。

M:
目が見えないヒトにとっての「デザイン」って何なんだろう?って思ってて。

 

H:
そうですよね。

M:
失礼だったらごめんなさい。例えば、色とか分かるんですか?

H:
全然、失礼じゃないですよ(笑)
えーと、色ですよね。
色についてのなんとなくの概念はあります。でも、例えば「赤」って言われてもどんな色かは全くわかりません。
赤は「ポストの色」だということは知っているのですが、色としてとらえるというよりは「その色の特徴」を理解している、と言った方が正しいかもしれません。

M:
そうなんですね!私たちデザイナーは色はこだわりがあるのですが、日向さんにとっては「概念」って感じなんですね。
じゃあ「デザイン」には全く触れたことなく、トーコンに入社したんですか?

H:
いえ、実はもう学校時代には「美術見学」という授業があったんですよ。

M:
え?美術の見学?ごめんなさい。見れないんじゃ・・・?

H:
そう思いますよね(笑)実は視覚障がい者でも楽しめる美術館というのがあるんです。
例えば、視覚障がいのある人たち向けに「手で触って感じてもらえる作品」を専門に展示している美術館に行ったり、白い背景に白い絵の具で何かが書かれているものを見たり、その絵と音楽を組み合わせて感じるアートを見たり。

M:
えー、そんな美術館があるんですね!知らなかったです!

H:
そうなんですよ。ただ、「なんかよく分からないけど、芸術って難しいなぁ」と思った記憶しか残ってません(笑)

■全盲者の美術館見学

H:
ちょっと話は変わるのですが、村田さんは全盲で美術館巡りをされている「白鳥さん」という方の本を読んで、とても刺激を受けたと伺いました。
※白鳥さんの本はコチラ

M:
そうなんです。たまたまWEBでこの本に出合って、買っちゃいました(笑)
この方のことは、日向さんはご存知でしたか?

H:
いえ、全盲の写真家がいるということは聞いていたのですが、美術館巡りをしているという方は初めて聞きました。
だから村田さんが興味を持ってると伺って、慌てて色々調べちゃいました。
彼が美術館巡りを始めたきっかけは、とても印象的でしたね。

確か、初めて美術館に行ったときに学芸員の方に絵の説明をしてもらった。その絵は風景画だった。
「ここには湖があり、葉っぱが浮かんでる」など、目で見えることの説明をしてもらっていた。
そのうち、その学芸員さんがしばらく黙り込んでしまった。
「すみません。先ほど湖と言いましたが、全体としては原っぱの画でした」と言った。
目が見えていても絵をどう見るか、どう感じるかの解釈は人それぞれ。
だったら、目が見えない自分も絵を説明してもらいながら想像して、自分なりに解釈するのも間違いじゃないことに気づいた。

・・そんなエピソードでしたよね。私もそれを読んで、とても面白いなと思いました。

M:
そうなんですよ。私もそれは思いました。
そもそも美術鑑賞は静かに見なければいけないっていうことにも昔から違和感を感じてて。
みんなでガヤガヤいいながら鑑賞するのも間違いじゃないし、そういう見方があってもいいと思ってるんですよね。

H:
確かに。なんか美術館ってジッと黙ってなきゃいけない、みたいなイメージありますよね。

M:
そうなんです。
白鳥さん自身が美術品について説明をしてもらって、その説明からその作品を想像して「画」を楽しむこと。
また、その説明の中で生じる「会話自体」も楽しんでいるんじゃないかと思いました。
ただ「画を見る」だけでは得られない楽しさや喜びがあるじゃないかな、と。

H:
それはありそうですね。

M:
説明する側の人も、白鳥さんにうまく伝えるために、いつも以上にきちんとその作品について理解しようとするので、新たな発見を得るということもあると思います。
実は、こういう話は仕事でもあるなと思っていて。

H:
それはどういうことですか?

M:
自分なりに満足いくデザインができても、人に見てもらうと印象が違ってたり、違う解釈があると実感することは結構あるんです。
自分には無い視点で見てもらうことで、色々な気づきがあったり、デザインが研ぎ澄まされていく実感があります。
だから、実はできるだけそこを意識してデザインをしています。
H:
村田さんがデザインをする上で気を付けているポイント、ということでしょうか?

M:
はい。そうなんです。
デザインをするときは、一部分だけ見るのではなく全体も見るようにしています。
「木を見て森を見ず」ということわざがあるかと思いますが、あるデザイナーの方が「木も見て森もみるイメージで作ることが大事だ」と言っていました。
まさに私がデザインする上で、一番意識していることかもしれません。

H:
なるほど!
そういう意味で言うと、私は普段音声読み上げで情報を得ているので「木」の部分は意識できますが、森の部分を理解するのはすごく苦手ですね、、、。
自分が描きたい表現をするのではなく、相手に伝わるかどうかが大事な「デザイナー」ならではの視点かもしれませんね。

 

■全盲者と広告

M:
もう一つ、質問していいですか?日向さんには「広告」って、どう見えてるんですか?

H:
広告代理店で働いていて、本当に申し訳ないのですが、普段の生活の中で広告を意識することがあんまりなくて。。。
街を歩いていても、看板を見ることができなんですよ。
むしろ道に置かれている看板は、邪魔なものとしての印象の方が強いです(笑)

M:
えー、トーコンで作ることあるのに!(笑)

H:
いや、本当に申し訳ないです・・・・。
あと、WEBを見ていてもバナー広告があることは分かるんですが気にしたことはあまりなくて。。。
得たい情報に行きつく障壁というか、邪魔というか・・・。

M:
また邪魔者扱い(笑)

H:
本当すみません。
また、最近ではWEBページの画像に「説明書き」がされていることも多くなってきましたが、どのような画像かを把握することしか意識していないので、色の説明などをされても記憶には残りません。

でも改めて考えてみると私は「広告」から情報を得ることがほとんどないので、良くも悪くも情報から取り残されている可能性はありますね・・・(汗)

M:
なるほど。難しい問題ですね

H:
なかなか答えが見つかる問題ではないので難しいテーマだと思います。
広告というのはある程度ターゲットを絞っている部分もあると思うので、全部が全部アクセシビリティを高めて、バランスを考えすぎても「ターゲットに伝わる」という本来の目的に達せないことも考えられるし。
とはいえ、色々な状態にある人たちに情報を伝えるという必要性もある。

M:
そうですね。誰にどう伝えるか、というのは広告を作る上で一番大事にしていることでもあります。
ユニバーサルデザインを意識して、全ての方に伝わるようにすることも大事。
でも、そこに行き過ぎることで「伝わらない」のは本末転倒となってしまう。

H:
もしかすると、キャッチコピーは一番バランスはとれているかもしれませんね。
印象に残る「言葉」がある広告には、私も心が惹かれます。
キャッチコピーとそれにマッチした動画を合わせるとか。

M:
そう考えるとテレビのコマーシャルはよく考えられていますよね。
あとラジオの広告はストーリー性があったりして面白い。
最近、リモートワークで自宅で仕事をしている時によく流しっぱなしにしているんです。
その時に流れる広告は、印象的なものが結構多くて。

H:
ラジオの宣伝は、すごい面白いです。
音声だけの情報なので、私にとってはある意味一番伝わってくる広告はラジオのものかもしれません(笑)

 

最後に

H:
話は尽きませんが、今日はこのあたりで終了したいと思います。
今日は貴重なお時間をいただいてありがとうございました。最後に感想などあればお願いします。

M:
最初は何を話せばいいのかなぁと思いながら対談を始めたのですが、
自分が今まで気にしていたことなどを話せて、共感いただけたことは良かったです。
最後の方の広告の話ではないですが、なかなか答えのない問題でもあると思います。
ただ、お互い見えてる世界が違う中で、お互いに思いやり、歩み寄ることで、もっと良いものがつくりあげられそうだな、と思いました。

H:
まさにそうですね。本日はありがとうございました。

 

 

・・ということで、目が見えない私とデザイナーさんとの対談で、どうなるものか分からなかったのですが、知識としてお互いに持っていることも理解することが出来ました。
どういう広告が良いか、というのは、なかなか答えは見つけにくいと感じます。
ただ、お互いに意見を交換し合うことで、よりよい世界が作れそうだと実感できた良い時間でした。

今後も様々な立場の方にインタビューを行い、広告という表現物においてダイバーシティ、ユニバーサルデザインについてetc、もっともっと深く考えていきたいと思います。

もっとトーコンの多様性の考え方や、組織のダイバーシティについて詳しく話を聞きたい、そんな方はお気軽にお問合わせください。

 

ちなみに、来週セミナーも開催します。

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    トーコンで広報・採用・成長支援などをいろいろ担当しています。料理と音楽と地元広島をこよなく愛す不惑女子です。よろしくお願いします。