HOME 組織について 見えないからこそ、見えてくる。 第4回:ベテラン営業と全盲社員のリアルな葛藤から学ぶ、組織を変える「多様性の原石」の磨き方

見えないからこそ、見えてくる。 第4回:ベテラン営業と全盲社員のリアルな葛藤から学ぶ、組織を変える「多様性の原石」の磨き方

見えないからこそ、見えてくる。 第4回:ベテラン営業と全盲社員のリアルな葛藤から学ぶ、組織を変える「多様性の原石」の磨き方

特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会が掲げるビジョン、「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現する」

トーコンでは、ブラインドサッカー男子日本代表スポンサーとしての活動支援にとどまらず、社内の日常のビジネス現場においても、この「混ざり合い」を体現する挑戦が日々行われています。

今回は、全盲のアスリートであり、同時にトーコンの一員でもある日向賢(ひなた さとる)と、長年トーコンの人材領域の営業として企業や組織を支えるベテランコンサルタントの木下和彦(きのした かずひこ)、この2人による協業ストーリーをご紹介します。

「同質性の罠」を打ち破る、真反対の存在との出会い

1997年の入社以来、営業・組織コンサルタントとして数々の企業支援に携わってきた木下。50代を迎え、長年の経験と実績がある一方、どこかで「一人で案件を進める限界や、ベテラン同士で組んでも変わり映えがしない単調さ」を感じていたと言います。

「気の合う人とだけ仕事をやるスタイルではもう自分には成長がない。ここから変わるためには、自分とはまったく違う存在と一緒に仕事をする必要があるんじゃないか」

そう考えていた時に、弊社トーコンの半年に一度の全従業員が集まる全社イベントが。そこで近くに座ったのが、2019年に入社した日向でした。彼は、大学在学中に全盲となり、大手印刷会社でのITエンジニアを経てトーコンへ入社したという異色の経歴。障がいやダイバーシティだけでなく、リーダーシップやコミュニケーションなどを題材に、研修やセミナーをやっているということは聞いていました。


※日向実施のWEBセミナー。スライド操作は第三者の操作サポートが必要ですが、セミナー内容は読み上げソフトの工夫で長時間のプレゼンも可能です

そもそもこれまで視覚に関わらず障がい者と呼ばれる人は、たまたま全く周りにいなかった。『日向君はいわば、自分には見えていないものがわかる人、気付けないことを知っている人』だと。つまり、自分とは「真反対」の感覚を持ち、自分が見えていないものを見ている人だと。

「この人と組むことは、組織にとっても自分にとっても大きなチャンスになるはずだ」

そう確信し、すぐに上長の許可を取り、2人での商談やコンサルティング、企業への研修活動をスタートさせました。

「これくらい話せばわかる」が通じない戸惑いと内省

しかし、いざスタートしてみると、想定していなかった壁に次々と直面します。

連絡をとる際も、「メールでいいのだろうか? 電話の方がいいのか?」と、些細なことから遠慮が生まれる日々。意を決してショートメールを送ると、しっかり届いて会話が成り立つことに驚くような、手探りのスタートでした。

さらに最大の壁となったのが、「ニュアンスや行間」の伝え方です。「これくらい話せばわかるだろう」という思い込みがまったく通用しない。「このコミュニケーションを端折るとダメだな」と痛感し、これまでの自身の対話姿勢を見つめ直すことになります。

「今まで、お客様や若手社員に対して『なんでこの人わかってくれないのかな』と思いながらも流してしまっていた場面があったかもしれない。相手のせいにせず『どうすればうまくいくか』を考え抜く、絶好の内省の機会になりました」

そこで工夫を重ねます。例えば、研修の事前打ち合わせではZoomで自撮り動画を撮影し、事前に確認してもらう。文章だけでは抜け落ちてしまう「リアルな感覚」やニュアンスを共有し、お互いの認識の齟齬をゼロにするための泥臭いアプローチです。

あえて「ガチャガチャ」するからこそ、チームになる

2人が揃ってお客様の商談に同席すると、日向が「僕は全盲です」と告げた瞬間、お客様は驚きとともに目を見開かれます。そうした固定観念が覆る体験を経て、組織課題について話を進めていくと、通常の商談ではなかなか出てこない会話に発展することも。

予定調和の反対にある、「面倒じゃないか」「おせっかいと思われるかも」という遠慮を捨て、お互いにどんどん口を出し合う。時には発言の声が被ってしまうほどの「ガチャガチャした議論」をあえて起こすようにしたのだとか。

組織が成長するプロセスを示した「タックマンモデル(上記図を参照)」において、チームが真の成果を出すためには、本音でぶつかり合う「混乱期(ガチャガチャ期)」の通過が欠かせません。綺麗な言葉だけで表面上の付き合いを続けていては、強いチームのルールは生まれないのです。

2人があえて泥臭くぶつかり合い、対話を重ねたからこそ、お客様の期待を超える提案を生み出す強いチームワークが構築されていきました。

そこから、現在では新たに、美容師を目指す高校生に向けたキャリア教育の授業コンテンツを2人が開発。全国展開を目指し取り組み中です。

多様性という「原石」を磨き、企業力に変える

ダイバーシティというと、「ただ多様な人材を集めれば、自然とイノベーションが起きる」と誤解されがちです。しかし、多様性は勝手に付加価値を生む魔法ではありません。正しくマネジメントし、葛藤を乗り越えて初めて爆発的なパワーを発揮する「原石」です。

木下と日向の挑戦は、まさに「同質性の罠」を抜け出し、「異なる知の結合」を事業の力へ変えるプロセスそのものでした。

・あえて真反対の存在と組み、同質性の限界を破る
・伝わる工夫、効果の最大化を逃げずにやり切る
・葛藤や衝突(ガチャガチャ期)を恐れず、対話を重ねる

この泥臭い対話の積み重ねこそが、予測不能な時代を生き抜く「企業力」となり、求職者や社員から「選ばれる企業」をつくる確かな基盤になります。

9月は、障がい者雇用支援月間です。障がい者雇用についての関心と理解を深めてもらい、障がい者の職業的自立を支援することを目的としたものとなりますが、これを義務ではなく、機会と捉え、自社の既存社員や事業への挑戦だと捉えてみてはいかがでしょうか?

「見えない」からこそ、見えてくるものがある。 もし日向に直接「障がい者とともに働く」ことを相談してみたい企業様、また自社の組織改革や、多様性を力に変えるチームビルディングに興味をお持ちの企業様は、ぜひお気軽に、以下のお問い合わせフォームからご連絡ください。

注記/ブラインドサッカーは日本ブラインドサッカー協会によって商標登録されています。

個人情報保護方針
前原 加奈
【株式会社トーコン 事業開発室 組織支援G 研修チーム ゼネラルマネージャー 兼 人事採用グループ 広報・採用・成長支援チーム】 東証プライム上場の機械・部品メーカーでの採用担当経験や、大手人材総合企業で大学でのキャリア教育開発等に携わる。現在はトーコンにて、人事として採用や従業員の成長支援を行う傍ら、企業の研修講師なども手掛ける。 <保有資格> ・国家資格キャリアコンサルタント ・日本MBTI協会認定ユーザー ※心理検査のエキスパート資格保有
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